朝起きてまず外に出る。
ブロックでかまどを作り火を起こし、
網の上にマキネッタを乗せコーヒーができるまで火をボーッと見つめている。
一日中草を刈り、何かを作ったり山仕事をし、
休憩でほけーっと山の木々を眺める。
あっという間に夜になり、
テレビも何もないので鈴虫の音色を聞きながら早々就寝する。
山の開墾生活は非常にシンプルだ。
そして東京に帰るときは心が妙にスッキリしている。
特にストレスを感じていなかったけどより一層クリアになった感覚がある。
この感覚は旅をしていてよく感じていたなあと思い出す。
その中でも私達2人が妙に印象に残る島があった。
アフリカ大陸のマラウイ共和国。
国土の3分の2が湖で、
その真ん中にポツンと浮かぶチズムルという島を訪れた時のこと。
半日歩けば島を一周できてしまうくらいの小さい島は、
大きな丘と平野が広がっている。
丘の上に登って見下ろすとバオバブの木が所々顔を出し、
湖を背景に見慣れぬ不思議な景色を作っている。
島の人たちはみんな愛想が良くて人懐っこい。
会話の中で「ありがとう」をこんなに聞いた土地は初めてな気がする。
宿から一歩外に出れば子供たちが笑いながらワイワイ何十人も集まってきて、
私の両手を握って歩こうと小さい子たちが我先にと手を握ってくる。
最終的には五人くらいの子といっぺんに手を握りながら歩いてて、
ちょっとしたスター気分を味わえる。
島には良くあることですが、水道やガスが殆どなく、
何か作るときは皆と同じように薪から拾う焚き火で生活していた。
特に飲み水が湖の水だったので、
過去に湖の水で悲惨な目にあった私達は毎回水を煮沸する。
朝起きて薪拾いから始まり、湿った枝にどうにか火をつける。
1日2人分が必要なので、何度も繰り返し行う。
太陽照りつける中何度も作っているうちに1日の大半が終わってしまうのだ。
空いている時間に島を探検したり、食料を調達したり、
湖を見つめてボーッとしていたりする。
ご飯を作るときは日が暮れる前に全て終わるようにし、
夜22時に島中の電気が止まるのでそれに合わせて寝る。
そしてまた朝起きて薪拾いが始まる。
そんな生きるだけのシンプルな生活。
このシンプルな暮らしが妙に2人とも記憶に残っている。
10日後この島を出るときには、山の開墾の時と同じように、
いや、もっと心が晴れやかで、
それまでの旅の疲れや嫌なことは無くなっていた。
人は元々自然の中で生きてきたので、森や海など自然の中で生活をすると
勝手に脳や体が癒されるという話を聞いたことがある。
生きるためのシンプルな暮らし。
文明が発達すればするほど自然やヨガのような癒しが流行るのも
皆が本能的に足りないものに気付いているからなんだろうなと感じる。
まだ海外に行くことはできないので、
山にいながら旅と同じような感覚を楽しみながら
今日も黙々と開墾に励みます。
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