vol.46 2021/03/03
そこにある恵みはおいしい

旅する鈴木 vol.46 そこにある恵みはおいしい

うちの山には菜の花が植えられている。
前の山の所有者が養蜂をやっており、蜂の蜜集め用に植えていたらしい。
春には黄色の絨毯が広がり目を楽しませる。
先日山に遊びに来たオリーブの師匠、岡井路子先生がその菜の花を見て、
「これで炒め物を作ろう」と突如クッキングが始まった。

フライパンにオリーブオイルたっぷり入れてジャッと1分炒める。
葉っぱをちょっと焦がし、味付けは塩のみ。
こんなにシンプルなのに、食べてみると格別においしい。
苦味がなく栗のようにホクホク甘い。菜葉ってこんなに美味しかったっけ。
と2人して首を捻る。

これがフードマイレージゼロのおいしさだと先生が教えてくれた。
フードマイレージとは、食料の輸送距離という意味らしい。
遠くから来た食材より、
近くで収穫された移動距離がゼロ(フードマイレージ0 )で
取れたものが新鮮で、栄養価高く美味しいということだ。
今まで山で食べられそうな草や木もあったが
開墾用にひとまず刈り取ることしか考えていなかった私達にとって、
これは山の見方を大きく変えてくれた。


その話を聞いて思い出すのは、旅中の食事。
記憶に残っているのは、都会の豪華なご飯より、
僻地に行った時その場で調達された食事が多い。

モザンビークの砂浜で売られていたロブスター。
世界各国のオレンジジュース。
フィリピンのカオハガン島では、焚いたご飯を浅瀬の海に持っていき、
ウニをとりながら食べるウニ丼。どれも体にしみる美味しさだった。


特にフードマイレージゼロご飯で思い出深いのは、
旅するリングVol.6にも書かれている
モロッコのティズギー村での食事。

モロッコのマラケシュから南へバスで山脈を越え、車をチャーターし、
未舗装の道をさらに進んでまた山を越えて
12時間後ようやくティズギー村に着く。
アルガンの木々と山々に囲まれ、山の斜面に土色のレンガを積み上げている
昔ながらのモロッコの家々が並ぶ牧歌的な小さな小さな村。

電気は通っているが、ガスも水道もない。
意味不明な私たち日本人夫婦をすごく暖かく迎えてくれ、
次々と出してくれる食事がとにかく全ておいしかった。

モロッコの定番料理店、タジンやクスクスに使われている野菜は
家の隣にある畑から収穫し、
肉は飼育している羊を捌き、休憩に出るミルクティーは
飼っている牛からの搾りたて。
一日中散歩をして、
お腹が空いたらその辺に生えているサボテンをもぎ取りぱくつく。

いつもお腹いっぱい食べているそんな生活をしていたのに、
帰る時には身も心も何かが落ちたようにスッキリしていた。
必要なものが入り体の隅々まで満たされた感覚。
これがフードマイレージゼロ生活だったんだなと今思う。
身体にいいことは旅で証明されていた。
開墾をすると言ってもただ場所を作るだけではなく、
そこにあるものを生かし使っていくことも大切なんだねと2人でうなずく。

最後は先生がプレゼントしてくれたアーティチョークを植えて、
早速フードマイレージゼロ生活の一歩を踏み出してみた。
今度はどんな食材を増やしていこう。

二人のリング


旅する鈴木

BS朝日「旅する鈴木-夫婦で世界一周」
番組詳細はこちら
https://www.bs-asahi.co.jp/traveling_suzuki/

 


 vol.45へ

back number 

vol.47へ 

AURORA GRAN BRIDAL

online shopへ

ページTOPへ

online shopへ

ページTOPへ